陥没乳頭はなぜ起こる?主な原因と治し方をわかりやすく紹介

陥没乳頭はなぜ起こるのでしょうか?
「授乳時に困りそう」「見た目が気になる……」「乳腺炎になりたくない」
このようにお悩みの方もいらっしゃいます。実際、陥没乳頭はセルフケアでは治りにくく、治療を必要とするケースも少なくありません。そこで今回は陥没乳頭について、原因と治し方を解説します。
陥没乳頭(乳首)とは?
陥没乳頭とは、その名の通り、乳輪より中に入り込んでいる乳頭のことです。ただし、形状はそれぞれで、凹んでいるものや真ん中だけくぼんでいるもの、平坦なものもあります。大人になるにつれて症状が明らかになることが多く、乳房が成長する思春期頃までは診断がつかないこともあります。
症状
陥没乳頭には、「仮性」と「真性」があります。仮性は、引っ張るなどして刺激を与えれば乳頭を突き出すことが可能です。一方真性は、乳首が完全に中で固定されているため、刺激しても乳頭を突き出すことができません。
陥没乳頭の症状を程度で分類すると、以下の通りです。
- 仮性陥没乳頭:軽~中度
- 真性陥没乳頭:重度
種類
陥没乳頭には、生まれつき乳頭が凹んでいる「先天性」と、出生後、外部要因で症状が出てしまう「後天性」があります。女性の1~2割が先天的な陥没乳頭といわれています。後天的に乳頭が陥没するケースをふまえても、陥没乳頭は珍しい症状ではありません。
陥没乳頭(乳首)の原因

なぜ陥没乳頭(乳首)になるのでしょうか?原因を詳しく見ていきます。
先天性陥没乳首(遺伝)
遺伝とはいえ、乳頭が中に入り込んでしまう物理的な原因は大きく2つあります。
乳腺や乳管の発達がアンバランス
乳頭を支える組織(乳腺・乳管など)の発達がアンバランスな場合です。その結果、乳頭が外へ出にくく、皮膚の内側へ引き込まれた状態になります。そのため乳頭がわずかに突出したり、くぼんだりすることがあります。
乳管が短い
乳管が短いことも陥没乳頭を引き起こす原因の1つです。乳管の長さが足りない場合、乳房内部の組織に引っ張られて乳頭を中に引き込みやすくなります。
いずれにしても、基本的には「病気」というより、乳管と乳頭の構造的な特徴によって起きる状態です。
後天性陥没乳首
それでは、後天性の陥没乳頭がなぜ起きるのかを見てみましょう。
乳腺炎やケガ・手術
乳腺炎などで乳房に炎症が起きたり、手術を受けたりすることも陥没乳頭を引き起こすきっかけになります。乳腺炎とは、授乳期に母乳がつまって乳房内で炎症を起こす症状です。乳腺が細菌感染を起こすことでも引き起こされます。いずれにしても、乳頭に続く乳腺や乳管が癒着し、乳首が引っぱられると陥没を招きます。また、ケガによって乳頭付近の組織に手を加えられた場合も、陥没することがあります。
加齢や急な体重変化
加齢や急な体重変化も陥没乳頭を招くきっかけになります。歳をとるにつれて乳房の組織が柔軟性を失ったり、また急な体重の増減で皮膚や脂肪に負荷がかかったりするからです。乳腺が細くなるにつれて乳首が内側に入りやすくなることもあります。体重減少の影響で乳房がしぼむように、乳頭の見た目も影響を受けかねません。
出産・授乳の経験
妊娠や授乳をしている方は、乳房の大きさが変化しやすいです。これは、乳腺の発達と収縮が起きる時期だからで、乳頭の形状に影響を与えることもあります。また、授乳中は母乳がたまりやすく、赤ちゃんの強い吸引や乳房の張りによって乳頭が一時的に陥没するケースもあります。
サイズのあっていない下着による締め付け
乳房のサイズにあわないブラジャーや、補正下着も陥没乳頭の要因になります。それらによって長時間乳首が圧迫されていると、乳頭が乳輪の内側に押されることがあるからです。特にワイヤーやきついカップが長期間当たる場合は注意が必要です。
急激な乳頭の陥没は乳がん等の疾患の可能性あり
乳頭が短期間で陥没した場合は、病気の可能性に注意しましょう。子育て中の方で片方の乳房に偏って授乳を多くしている場合、左右の乳首の凹み具合がことなることはあります。しかし、特に思い当たることがなく、片方の乳首が突然凹んだ場合は、別の理由があるものです。乳腺の疾患である可能性も考えられます。気になった場合は、早めに乳腺外来や婦人科で検査を受けるようにしましょう。
陥没乳頭(乳首)のデメリット・リスク

陥没乳頭にはさまざまなデメリットがあります。4つ見てみましょう。
見た目が気になる
胸の大きさを気にする方が多いように、乳首の形状や乳頭の大きさもデリケートな話題です。日常的に人に見られる部分ではありませんが、コンプレックスを抱えて受診される方は少なくありません。また、プールや温泉、サウナなどでの着替え時には、心理的なストレスになる場合もあります。
かゆみや痛みが出ることがある
陥没乳頭は乳首が凹んでいるために溝にカスが溜まり、乳頭のお手入れがしにくいです。その結果、かぶれやかゆみや痛みを覚えることがあります。
不衛生になりやすく乳腺炎のリスクがある
陥没乳頭は、乳腺が引っ張られて乳首が内側に入り込んでしまい、乳首周辺の汚れや皮脂が溜まりやすいです。清潔を保つのが難しくなると、乳腺炎や乳輪下膿瘍といった感染症を繰り返すリスクが高まります。
授乳しにくい
重度の陥没乳頭の場合、赤ちゃんが乳首を吸いつけず、直接母乳を与えるのが難しくなります。軽度の場合は、授乳前に乳頭マッサージをしたり、授乳補助器具を使用したりして対策が可能です。しかし、完全に陥没している場合は、搾乳するなどの代替策が必要になります。授乳期に直接母乳をあげたい方は、陥没乳頭の治療を検討するのも良策です。
陥没乳頭(乳首)の治療方法
ここからは陥没乳頭の治療方法をご紹介します。
セルフマッサージ
軽度の陥没乳頭の場合は、マッサージで対処可能です。乳頭周囲の皮膚を柔らかくし、内部の組織をほぐすことで、乳頭を軽く引き出すことが期待できます。
<手順>
- 乳輪の内側から外へ向かって押し出すように刺激する
- 乳輪全体を広げるように伸ばし、周囲をほぐして柔らかくする
- 乳首を指でつまんで軽く引き延ばす
- つまむ場所や引く方向を変えながら、上記の手順を繰り返す
ただし、強く引っ張りすぎると皮膚を傷つけるので、無理のない範囲で行うことが大切です。
乳頭吸引器
軽~中度の場合は、市販の乳頭吸引器を利用するのも1つの方法です。乳頭吸引器は、乳首に圧力をかけて引き出し、内側にあった部分を外側に引っ張り出します。毎日継続して使用することで、陥没乳首の改善が期待できます。ただし、改善効果には個人差が大きいです。
外科的手術
マッサージや乳頭吸引器では改善しない方や、重度の陥没乳頭の方は、クリニックでの手術が選択肢になります。クリニックでは乳頭の状態を適切に診断し、症状に合った手術を受けることが可能です。将来授乳を希望している場合は、乳管を温存するように手術します。日帰りで受けられることが多く、根本的な解決を目指す方に適した方法です。
完治を目指すなら陥没乳頭(乳首)の手術療法

クリニックでは実際、どのような治療を受けられるのでしょうか。陥没乳頭を治療する手術療法を簡単にご紹介します。
埋没法
埋没法は、皮膚を大きく切らずに針と糸で乳頭を外側に固定する方法です。傷跡が目立ちにくく、ダウンタイムが比較的短いのが特徴です。軽〜中度の陥没乳頭の治療によく用いられます。乳管を損傷することなく温存しやすいのが特徴です。
切開法
重度の陥没や埋没法で再発している場合は、切開法が選択肢になります。乳頭の根元を小さく切開し、内部で乳首を引き込んでいる組織を丁寧に切り、形を外側に固定する手術です。埋没法よりも切る箇所が多いのでダウンタイムは長めになりますが、より確実性の高い方法です。
陥没乳頭(乳首)を手術で治療するメリット
陥没乳頭を手術で治すと多くのメリットがあります。
見た目や左右差を整えられる
手術によって乳頭の形状や位置を人工的に変えられるため、希望にあわせてきれいに整えることが可能です。乳頭の形状に左右差がある場合も均衡にしやすく、見た目からコンプレックスを抱えていた方でも解決につながります。
授乳しやすくなる
中に入り込んでいた乳頭を突出させられるため、母乳育児を目指している方にとっても良報です。陥没がなくなり赤ちゃんが吸いつきやすい乳首になるので、授乳時のトラブル解消にもつながるでしょう。
清潔に保ちやすく、乳腺炎のリスクを下げる
乳頭が外に出ることで清潔に保ちやすくなり、乳腺炎などのトラブル予防にもつながります。陥没乳頭は凹んだ部分に汚れが溜まりやすく、炎症や膿が発生しやすい環境です。
乳首が外に出た状態を維持できれば、通気性がよくなりケアもしやすくなるでしょう。
陥没乳頭(乳首)の治療に関する注意点

陥没乳頭の手術療法のメリットを見てきましたが、注意すべき点もあります。
切開するため数日は痛みや腫れがでる
埋没法か切開法かによって程度は異なりますが、術後は腫れや痛み、軽い出血などがある場合があります。通常は数日〜1週間で落ち着きますが、術後は医師の指示に従ってケアすることが大切です。また無理をしないように体調管理にも気をつけましょう。
妊娠中・授乳中は手術できない
陥没乳頭の手術療法は、通常、妊娠中や授乳中にはできません。乳腺が発達し、乳房や乳頭が敏感になっており、術後の負担が大きいためです。重度の陥没乳頭で出産後は直接母乳を与えたいという方は、妊娠前に治療を受けることをおすすめします。軽~中度の方で乳頭の美的な改善をご希望の方は、授乳期が終わってから手術を検討してみてください。
再発の可能性もある
陥没乳頭が手術で改善しても、加齢や体質の変化などで再び陥没することがあります。特に軽度の方法(埋没法)では再発の可能性が比較的高く、重度の場合は切開法が推奨されることがあります。
陥没乳頭(乳首)の原因と治療に関するよくある質問
陥没乳頭でお悩みの方から寄せられる、原因と治療にかんする質問を紹介していきます。
陥没した乳首をセルフケアで完治させることはできますか?
乳頭の突出がある軽~中度の場合は、マッサージや乳頭吸引器で改善が期待できますが、完全に治すことは難しい場合もあります。根本的な解消を目指すなら、医療機関に受診し、正確な診断のもと、適切な治療を受けるのが最も確実です。
陥没した乳首を手術で治療すると授乳ができなくなってしまいますか?
切開法で乳管を温存できるように手術を受ける場合は、将来的に母乳育児が可能です。しかし、重度の陥没で乳管の癒着が強い場合は、授乳機能に影響が出る可能性もあります。事前に医師と相談し、納得した上で治療を受けましょう。
陥没した乳首の治療は保険適用外ですか?
乳頭の見た目を改善するなど、美容目的の治療は自由診療扱いで健康保険が適用されません。しかし、乳頭や乳腺で炎症を繰り返すなどの問題があり、治療が必要なケースでは、保険が適用されることもあります。保険適用条件は、クリニックによっても異なるため、受診の際に確認することが大切です。
まとめ
陥没乳頭は女性の1~2割が生まれつき持っており、加齢や体の変化、生活習慣などによって後天的に起こることもあります。軽度であればセルフケアで対処できますが、見た目を大きく改善したい場合や授乳などの機能面など根本的に治したい場合は、手術療法が有効です。
陥没乳首を放置しておくと授乳や衛生面での問題が起こる可能性もあります。気になる方は、早めにクリニックに相談してみてください。
当クリニックでも陥没乳頭の治療を行っています。大阪近辺で治療をご検討の方、またご質問のあるかたはお気軽にお問い合わせください。